エクスクルーシブという(セコい)利権。

3日、4日、二日間かけてバイトをした。下請けの下請けみたいな仕事。いわゆる内職ってヤツですね。内職は、いい。誰にも干渉されず黙々と単純作業を進めるだけだからである。その間、思う存分音楽を聴いてられる。買ったのにまともに聴いてないCDをセレクトしてきてデカい音で再生しつつ机の上で黙々と作業。頭の中はほぼ空っぽ状態で指定数を終わらせた時は「明日のジョー」のごとく真っ白な灰になった。


そんなことはどうでも良いのだが、今日は若干苦言を呈してみようかなと思った次第だ。数人の友人には愚痴を漏らしてはるのだが、ディスクユニオンの「エクスクルーシブ配給」というヤツ。これがマイナー音楽/アンダーグラウンド音楽の日本での流通をとても苦しめている。
配給のエクスクルーシブ契約というのは日本語で言うと「独占配給契約」で、つまりたとえばINCUSレーベルは日本に商品を流通させる際には配給業他社や独立ショップに卸すことはできず、全てディスクユニオンを経由させなければいけないというユニオンとINCUSの間の契約のことだ。
ユニオンが配給を開始したのは私がまだDIWにいた頃の話だから2000年ちょっと杉くらいだったかな。当時の貿易部の担当Kさんに、ユニオンが独占配給できるような、マイナーでアンダーグラウンドなレーベルをピックアップしてくれないかと頼まれ、そういうふうに私に頼むこと自体も商売としていかがなものかと今思えばKさんの判断も気が狂っていたとも言えるのだが、まあとにかく、INCUS、LEO、AYLER、LOVELY MUSIC、ICTUS、POTLATCH、PI、INTAKT、FMP、BVHAAST、ICP、MATCHLESS、NATO、DATA、RANDOM ACOUSTIC、HAT ART、などなど挙げればきりがないが当時他社の配給から漏れている「その手の」レーベルをピックアップした。そこからどのくらいがユニオンのエクスクルーシブになったのかは知らない。しかしユニオンを辞めてこのCDが欲しいと思ってもどこを探してもなくて、結局アメリカのアマゾンやDowntown Music Gallery(以下DMG)の通販で購入することが増えて来た。
昨年年末に、エリオットのCARBONの新譜"void coordinates"が出たことをDMGのニューズレターで知り、ドラムのジョー(・トランプ)からそのことも聞いていたので、こりゃ買わねばと思ったが日本国内のどこを探しても見つからず結局DMGの通販で買った。ところがそのインナーになんと落丁あり! エリオット自身のライナーなので是非読みたいと思い、DMGに連絡するのもなんなのでINTAKTに直接落丁があった旨メールした。するとすぐに返信が返って来て「大変申し訳なかった。すぐに新たなライナーを送るから」と。その四日後に新品のライナーが届いた。封書の中には新品ライナーとINTAKTのカタログと「Jun, sorry! Regards,」という手書きの便箋。いや〜心温まるではないですか。さすがマイナーレーベル。こうでなくちゃね。あ、何の話だっけ、そうそう、それでINTAKTのサイトを見ていた時に、INTAKTの日本の配給がユニオンであるとわかったわけ。なんだよ、入荷してねーじゃん、なんだよ、ユニオン。とそう思ったわけさ。ずいぶんここまで来るの、長かったな。
それともうひとつ、IMJの鈴木さんと話していた時に「うちのショップで仕入れたいものをユニオンが仕入れてくれないんだよね。でレーベルに直接連絡したんだけど日本での配給はユニオンだからそこから仕入れてくれって。どうしょーもないよ。」とグチっていたのを聞いて怒り頂点に達したというか、この非常に良くない状況をなんとかしたいと思ったのがこの文章を書くきっかけともなった。
私は別に「その手の」音楽を知らない人に知らしめたいと思っているわけではない。ある一定の、少数の人の手に届けばいいのだと思っているだけだ。ところが「エクスクルーシブ契約」のおかげで少数の人に届かないということが現実に起っている。エクスクルーシブ契約をしているのにそのレーベルの商品を入荷させない、それはこちらの(ごく少数の)音楽ファンにとっても、先方のレーベルにとっても、全くの悪状況である。極端に言えばユニオンはエクスクルーシブ契約のせいでレーベルとそのファンを断絶させていると言っても良い。ユニオンも商売であるから売れないものは切って行くという方針があるのだろう。それは分らなくはない。しかしそれならば即刻エクスクルーシブ契約を破棄すべきではないのか。エクスクルーシブ契約を続行するのであれば各ショップにそのレーベルの全てのインフォメーションを流し、オーダーを募るべきではないのか。そういう業務が追いつかないというのなら、本当に即刻エクスクルーシブ契約(というものすごくセコい利権)を止めていただきたい。そのレーベルにとっても「その手の」音楽ファンにとってもひとつのメリットもない。
ユニオンが配給を始める時にインプロ、ジャズ周辺レーベルをセレクトしたのは私だ。だから私もその責任の一端を背負っている。「その手の」音楽について詳しい担当者がいないのなら、エクスクルーシブ契約を切って、ノンエクスクルーシブの自由な流通にしていただきたい。オレがインフォを作ってもいいぜ。ただし時給/もしくは原稿料は高いよ。
ユニオンさんは現在個人的に、中古の購入や買取でとてもお世話になっている。中古の集荷や品揃えはやはりどんな店舗をも圧倒している。パラダイスのようなお店だ。しかし輸入の新品でそのような事態が起っているのは、将来的な中古の集荷にも影響がないとは言えないだろう。私の心にあるわだかまりを取り除く意味でも、ユニオンさん、エクスクルーシブ契約をするのなら責任を持ってそのレーベルのケアをしていただけませんかね。
以上。