昨日は死ぬかと思った。

ウソじゃないです。ホントに死ぬかと思った。
どうも朝から調子は悪かったのだった。立ち眩みが激しいというか、まず起きた時から若干の脈の早さ、立ち眩みの自覚症状はあったのだ。しかし中野に用事がある。行かねばと思い、水道橋まで自転車で行って、水道橋から中央線に乗って中野に行ったのだった。用事を済ませてから、ディスクユニオン中野店に行ってなにか妙ちきりんなジャズなどでも買おうと思ったのだった。そしてその階段を上って店内に入った瞬間である。ありえないような動悸と激しい立ち眩み。視界の外側から色が変わっていった。これホント。外側からモノクロになっていった。


オレはここで死ぬんだ、と思った。小学生の時の朝礼で、貧血でぶっ倒れたあの感じ。そこで記憶は途切れ、気付いた時には保健室の天井が見えたあの感じ。


辛うじてCD什器につかまりつつ、しばらくするとそれらの症状はとりあえずは治まった。CD選びなどとんでもない。すぐさま店を出て、しばらくパニック状態。落ち着けない。とりあえず水だ、と思い、すぐ近くのコンビニで水を購入。しかしここで「あ、そうだごっちゃとある一円玉と五円玉をついでに処理しちゃおう」とかそういう部分だけ冷静で、一円玉5枚と五円玉2枚を含んだ105円也を支払い、ごくごくと水を飲んで深呼吸。不整脈のように脈打っている。ドッドッドッドッ。というんじゃなくて、ドッドドッッドッドドッドッドド。て感じ。これはホントにヤバいのではないか。
すぐさま電車に乗り込み水道橋まで。座れて良かった。立ちっぱなしだったらまたいつあの激しい動悸が襲ってくるか分らない。座っていれば大丈夫、と妙な確信がある。自転車ですぐに家に帰ろう。死ぬなら家だ。オレは畳の上で幸せな死に方をしたい。といっても今住んでる家に畳はないが。
自転車を漕いでも多分大丈夫だ、というまた変な確信。ところが春日辺りまで来たとき(少し坂になっているんですかね、あの辺)、また激しい動悸。このまま気を失って倒れてトラックに轢かれて死ぬのはイヤだ、畳の上で幸せな死に方をしたい...と思って、焦って歩道で小休止。しばらくするとまた治まる。
とにかく、どのような時にこのあり得ない動悸は出来するのか、と。考えてみた。
「足を動かしたりして血流に変化を及ぼし心臓に負担をかける時だ。」
しかし、私の住む家にたどり着くには最後にわりと急な坂がある。問題はその坂だ。自転車で上ると必ずやあの激しい動悸が襲うに違いない。そう考えて、自転車を降りて歩いて上った。ところがそれもまた心の臓に負担がかかった。自転車のハンドルを握る手ですら異常にダルい。ハンドルをこのまま手放したい、しかしそれをするとオレの後ろにいるやも知れぬご老人にご迷惑がかかる、精神力で持ちこたえたが案の定上りきったところで本日三度目の立ち眩みと激しい動悸。畳の上で...オレは...。数分後治った。


さすがにここまでヒドいと、すごく不安になる。帰ってすぐにパソコンで検索。しかしろくな答えが出て来ない。ネットの情報なんてそんなもんか、まぁ分ってはいたんだけどやはり何か虚しい。一番近いのは自律神経失調症とか、狭心症とか、パニック障害とか。しかしどれもピタリと符合するものではない。
とにかく病院だ。


ということで、本日病院へ行ってきた。しかし昨日と違って本日の体調はすこぶる快調だ。先日行って心電図とレントゲンを撮った病院は明日まで盆休み。盆休みかよ! まぁ盆休みを他の病院とはズラしたんでしょうね。なので午後一でいつものかかりつけの医者へ。ひとしきり先週からの一連の体調の悪さと昨日の死ぬかと思った動悸について、あらん限りの弁舌をふるった。講談師のごとく。しかし先生はクールだった。
「熱もないし、脈も正常だし、血圧も正常ですね。まぁ歳だけに心臓も弱ってきているんでしょうね。タバコをやめて酒もやめてコーヒーなんかも控えればじき治りますよ。治んなかったらまた来て。」
こないだの「逆流性食道炎」との関係性も問い合わせた。
「100%とはいえないけど、無関係でしょう。」
なぜだ、なぜいつもこうなのだ。なぜ病名とか症状名を名辞しないのだ。「自律神経失調症です。」とか「狭心症です。」とか、なぜ言ってくれないのだ。そして、だいたい病院に行くときに限ってなぜオレは体調が良いのだ。昨日は死ぬほどだったんだといくら言っても、今大丈夫であればいいのか? そんなことでいいのか?
納得せぬまま、薬ももらわずに、帰ってきた。


結局オレは、病気になりたいのか? 病気に憧れているのか? 自分自身でよう分らなくなってきた。来週は、先週心電図とレントゲンを撮った病院にもう一度行ってみることにする。