謎のハートエイク。

ハートエイクというと、胸が痛むような激しいまでの恋愛などというような事態を思い起こさせるが、そんな浮いた話などもあるわけもなく、実際胸が痛かったのだった。
月曜日の朝目が覚めると喉から下、胃の噴門部辺りまで、すなわち胸部といわれる部位の真ん中辺り、食道とか気管が通っている部位が痛かったのだ。よく呑みに行って煙草を吸い過ぎたりすると翌朝肺が苦しいとかあるけれど、その苦しさとは異なる感じ。なんだなんだなんだいつもと違うぞと思い、月曜日はやり過ごす。翌日火曜日。痛みは引いていない。むしろ痛さ増量感がある。どのような時に痛いかを自ら分析してみると、前屈みになった時、深呼吸する時、ゲップが出ようとする時。そのような時に謎のハートエイクが起るのだ。鈍痛というのでしょうか、何かモヤッとした痛み。しゃっくりが出てるときの横隔膜の鈍痛にも似ている。もしかしてヤバいかもと思い、ネットで色々と検索してみても似たような症状に当たらない。それでもなんとか火曜日もやり過ごす。翌日水曜日。更に痛さ増量感。寝ている時にすら苦しい、というか痛い。深呼吸時に痛いというのはなかなか辛いものがあって、健康失って初めて健康のありがたさを知るという、過去何度も経験していることを再認識する。とにかく病院だ、病院に行こうと早めに就寝するが、なかなか寝付けず、浅い眠りで木曜日(本日)朝目覚める。やはり治っていない。い、痛い、ううっ、などと呟きつつ、さまざまな発送業務を終わらせてから自転車で病院へ行く。と、いつものかかりつけの病院が盆休みだ。じゃあしょーがないと初めて行くことになる向かいの医者に行くも、そこも盆休み。くそ〜盆休み。何のためにあるのだ、盆休み。ほとんどの医者が盆休みだ。半ば絶望的な気分になりながら、付近を自転車で病院を探し続ける。ようやく見つけた内科外科消化器科。おあつらえ向きの病院ではないか。しかも盆休みは来週から。ラッキーだった。


ひとしきり症状を先生に話し、もしかしたら横隔膜が炎症を起こしているのではと私は思っておるのですが、と余計なことまでいうと「まぁそれは稀な症例だから今の時点では考えられないね」と、冷静に否定された。余計なことは言うものじゃないと思うが、自分の身体は自分が一番分っているという私の持論によると、それは言うべきことでもあると思う。否定されたけど。
胸部レントゲンと心電図をとる。すぐに結論が出て、レントゲンには異常なし、心電図は右と左で若干ズレている部分は気になるが、ほぼ健康状態と言えるでしょうと。では私のハートエイクは何が原因なのか。心臓、肺、気管は各々異常なし。残るは食道である。先生の暫定的結論によると「胃酸が食道に逆流している可能性が考えられる」と。そう言われれば、前屈姿勢の時に痛くなる症状とかゲップの時に痛くなる症状は納得が行く。しかし深呼吸の時に痛くなる症状が解決しないではないか。なんとも不安を残したまま、胃酸の分泌を抑える薬と胃の粘膜を保護する薬をもらって帰って来た。これで治らなければ、別の原因が考えられる。症例は少ないとはいえ、横隔膜炎はあり得ないか。症例が少ないことを理由に横隔膜炎の可能性が低いとするのは、論理的ではない。個人個人の体は微妙なところで全く違うのだし。
結局、これといった病名も明かされないまま、すなわち不安を抱えたまま薬をもらって帰って来たのだが、まあガンなどの重大案件ではなかったことが救いか。それにしてもハッキリと病名が分らないというのは不安である。言葉にされて初めて安心するということはありますね、こういった場合。逆にキース・ジャレットのように「慢性疲労症候群」と名付けられるのもどうかなと思うが。何か無理矢理感がある。それだったらオレも慢性疲労症候群だよ、と思う。
2週間分の薬をもらって、二週間後くらいにまた来てくださいと言われたが、治ったら行かない。治らなかったら行ってもいいけど。しかし治らなかったときは胃カメラが待っているのだろう。その時にはハッキリと主張するつもりだ。「胃カメラを飲むくらいだったら死んだ方がマシです」と。でも最近はカプセル胃カメラを飲んだりもするんですね。それだったらまぁいいかな。口や鼻から管を入れるような暴力的な行為は自らの意思において私は否定する。というか、怖いだけなんだけど。

しばらく安静にしてます。ビールはゲップが出やすいのでちょっと控えます。胃への刺激物も控える。それにしても、夏にビールが飲めないというのは辛いですね。早く健康に戻り、汗をいっぱいかいた後にゴクゴクっと喉を鳴らしてビールを呑んで「プハ〜」と言いたい。