朴さん2日間。

朴在千(パク・ジェチュン)という韓国のパーカッション奏者がいる。
私がディスクユニオンにいたとき彼とカン・テーファン(sax)とミヨン(p)と演奏したトリオのCD『インプロヴァイズド・メモリーズ』をDIW番号をつけて配給した。あまり売れなかったので怒られた。一昨年も来日してDOMフェス他、数カ所で演奏したのも見に行き、改めて素晴らしいパーカッション奏者であることを再認識した。彼がまた来日したので、4日(水)に佐藤允彦(p)、豊住芳三郎(ds, 胡弓)のトリオのセット@新宿ピットイン、5日(木)に大友良英(turntable, guitar)とのデュオ・セット@キッド・アイラック・アート・ホールを見に行った。両日共にとても楽しんだ。
ピットインのはサブさんの胡弓がいい味出してて、佐藤さんのピアノが入ってくるタイミングに感銘。佐藤さんがピアノの方に向かったのが見えたので、あ、そろそろピアノ入ってくるなと思って、目を閉じた。どのタイミングでピアノ入ってくるのかなと、ものすごい集中力で聴いていた。こういう場合はステージを見ないことにしているのだよ、私は。決して下向いて眠っているわけではないのだよ。時々眠るけど。コンマ何秒の差で即興音楽は全く違う演奏になりうる。佐藤さんは実にプロフェッショナルだ。そのコンマ何秒を操っているかのような佐藤さんのピアノ。比較的大きい音の応酬のシーンでも、全ての音楽的ヘゲモニーは佐藤さんが握っているように聴こえた。
続いて二日目。キッドは上のステージが見下ろせるスタッフ用の足場みたいな場所から演奏を見聴きする。きわめて繊細なパクさんの演奏はダイナミックレンジもとても大きい。微細な音から大きな音まで見事にマレットやスティックをコントロールしている。パクさんの右横に立ててあるバスドラ(?)をいつ打ったのか分からないくらいの動き。「一騎打ち」する大友はフィードバックを含むターンテーブルの持続音とギターの断続的な音を適宜使い分けて(いるように見えたが?)演奏。特にギターの断続音とパクさんとの応酬は興奮した。私は根が単純なのでこういうサウンドを聴くとつい興奮物質が分泌されてしまうのであった。
N.Y.でエリック・フリードランダーのバンドでタケイシサトシさんがやはり胡座をかいてパーカッションを叩くのを見た。こちらもやはりオレのハードにぐっと来る音で、結局、単にオレはアジアの打楽器の音が好きなだけなのかな、とも思ったが、もちろん伝統に則ったアジアの打楽器の音も好きだけど、即興におけるこういった「違和感」のようなもの?、そういうのがまぁ好きなんだろうなと思った。その違和感は楽器のサウンドであったり演奏のメソッドであったりするわけだけれど、何かに則った音楽というのは、どこかによほど突出した要素がないと、ことごとくつまらなく思えるのはそういうことか、と自分で納得した。そして何よりパクさんの顔が、オレは好きなのだ。最後はミーハーなオチになって終了。