ICPオーケストラ。

新宿ピットインにICPオーケストラを観に行く。前回の来日は1982年。この時の様子の一部はDIWから出た『ヤーパン・ヤーポン』で聴くことができる。当時尽力したのは近藤等則や豊住芳三郎といった面々。2002年、オレはこれをCD化する仕事をした。ついでに近藤さんの新作『ナーヴ・トリッパー』も。『死は永遠の親友』も。『ホワット・アー・ユー・トーキング・アバウト?』も。DIWはJ.ゾーンがプロデュースしたミシャのアルバムや上記の『ヤーパン・ヤーポン』も出してるのに即売には一枚もタイトルなし。即売はディスクユニオンが仕切ってるのにー。かなり悲しかった。まぁディスクユニオンはこの手の売れない音楽を現在積極的には売らないのだろう。分かっちゃいるのだがその現実を目の前にしたときはやはり悲しくなる。
そんな憂鬱を吹き飛ばしてくれるほどICPの演奏は楽しかった。特にハンのドラム! 今回はスネアひとつだけでとても豊かなリズムと音色をもの凄いスピードで叩き出し、前回見た時(サブさんとのデュオ及びケシャバンが入った)も驚いたが今回は更にその驚きが増した。オレがファンであるところのウォルター・ウィールボスのボントロも味わい深くて良かった。さてしかし、この先に何があるのか。つーことだ。何かオレは即興のどん詰まりみたいなことも感じたのだった。ICPってこれが限界なのかな、とも。演奏は確かに面白いしヴェテラン揃いなので安心して観て・聴いていられる。その「安心して観て・聴いていられる」ことがどうなのか、と。25〜30年前ならこれは決して安心しては聴いていられなかっただろう。どこで笑いをとるのか。どこで爆発するのか。どこで誰がアウトしてゆくのか...。前回のICPは現場に居合わせてはいないが、『ヤーパン・ヤーポン』を聴いて想像力をふくらませると、そんなオーディエンスと演奏者の緊張が伝わってくる。時の経過はフリージャズをも安全な音楽に変えてしまうということか。それとも聴き手(オレの主観)の聴取感覚が変貌したのか。
こういう音楽をたまにしか聴かない人にとっては十分に刺激的であったに違いない。しかしなんだかオレにとっては至極フツーのジャズに聞こえてしまったのだった。それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。
それにしても知り合い知人が大勢いた。老若男女、かなりの数の知り合いに挨拶した。うーん、なんだかなー。なんやかや言ってオレも井の中の蛙なのかも知れない。帰りしな、ウォルターさんとエルンストさんと話をさせていただき、ちょっと嬉しかったり。ウォルターさんのボントロソロCDを購入。
ジャズの枠をはみ出すだけ。のことにオレはもう興味が持てなくなっているのかも知れない。