Altered States / bluffs ii レコ発@新ピ。

アルタード・ステイツ・レコ発@新宿ピットイン。観客60人程度か。少なすぎ。いや、このくらいの密度がちょうど良い感じだろうか。アルタードは完全即興のグループなので、その時の場の空気感とかメンバーのポテンシャルとかそういった外部要因/内部要因が演奏を大きく左右する。では例えば、本日の演奏はどのモメントが彼らの演奏にどのように影響を与えたかというのは分からないし、本人たちも分からない。そもそもそういうふうに分析的に演奏を捉えようとするのは全く意味のないことでもあるけれども、皆無であってはならない。批評行為というのはこの両極端を認識・往来しつつなされなければならない。
前回のライブ@NHKは驚くべきハイテンションの63分1曲であったが、そのテンションはセカンドセットに持ち込まれた観があった。今回とても面白かったのは3人が各々のビートを刻んだ部分だった。3人とも自らのビートで(結果的には)ポリリズムで曲が進行するシーンが何度もあった。これは強烈に面白かった。「合わせてもいいし合わせなくてもいい」自由さをもって、しかし彼らは各々ステージ上でインスタント・コンポーズをしようとする。音楽を創ろうとする。特に芳垣さんのドラミングは絶品だった。音の多彩さと強弱もさることながらナッスンやうっちゃんの一定のビートにものすごくヒネクレた解釈で別のビートを刻む。これはもしかしてNHKの時よりも図抜けたセンスだったかも知れない。(このヒネクレ感はCDでも一部堪能できますので購入した方はよく聴いてください。)17年も同じメンバーで即興をやっているとお互いに手の内が見えたり次に何をやるかが分かってしまうだろう。でも即興の面白さは、分かるからこそ別のことをして興じることなのだろう。昔、手塚治虫(だったと思う)のマンガで「あんたはオレが犯人だということを知っているとオレは分かっていたよ。」「そういうことをキミが言うのをオレは分かっていたよ。」とかなんとか、そんなのがあったけど、そんな読み合いとハグラカシ、聴く耳と瞬発力・対応力、演奏のスキルと各々が心地よいと思うサウンド(人数分)、そんなこんなが、全ての要素が、ポテンシャルが総合されて出てくるアルタードの音楽は、やはりライブが圧倒的に面白い。CDはそのほんの一断片だ。ライブを観た人は異口同音に「CDよりライブの方が面白い」などというが、それは当たり前なの。そんなの分かっててオレはCD作ってんの。ライブよりCDの方が面白かったら、それは問題でしょ。CDはあくまで「作品」でライブは「ナマモノ」だから、ライブをやっている音楽家のCDはあくまでナマモノのガイド的なものなわけです。もちろんそのガイド的なものを聴いてもらうためにジャケに凝ったり音を良くしたりするわけですよ。知らない人に知らしめたり、知ってる人でも持っていたいな、と思ってもらえるように。で、だからみんなライブに行こうよ、ということを激しく主張したいわけです。レコードとかCDだけ聴いて蘊蓄語るな、と。月3回くらいでもいいのさ。行かないより。というわけで(どういうわけだ?)アルタードのライブは、即興に関して必ず何らかのことを考えさせてくれる。これは私個人の感想なのだけれども、立ち会った人々はあの演奏をどのように感じたのだろうか。とても興味深い。
終了後は次回アルタードのライブ企画も持ち上がった。その企画内容でおおいに盛り上がり、芳垣大演説が始まり時計は2時を回ったので、またうっちゃんとタクシー相乗り。あ、ちなみにドラム・マガジンに芳垣さんは「ドラム・ノーベル賞」という連載を書いていて、それがとても面白いので皆さん読むように。
芳垣「沼田、オレ、ドラム・マガジンに連載持ってんの知ってるか?」
沼田「ああ、ドラム・オリンピック。」
芳垣「ドラム・ノーベル賞や! ま、似たようなもんやけどな。」