不自由なこと。

アルタード・ステイツのCDの在庫がメタカンパニーからなくなったので納品に行く。先月末に雑誌に色々と掲載されたのでその効果なのか、けっこうじわじわと売れてきた。初回に付くCDRも店頭在庫分から消えつつある模様。ただしライブ会場ではCDR付きを販売しますのでライブに来て買ってくれればと思います。
メタカンパニーに納品後、新宿ピットインに藤乃家舞、梅津和時外山明、デワ・アリット(ガムラン)+日本のガムラン・グループのセッションを観に行く。観客席の真ん中で演奏、観客はそれを取り囲むほぼ円形のステージ。
なんか客席に頭の狂ったヤツがいて座って激しく身体を揺らしている。まあそれだけならいいのだが床を蹴る音が気になって演奏を聴くことに集中できない。途中何度かピットインのスタッフに注意されたが、しばらくするとまた始める。ガムランの踊りでは霊が憑くことがしばしばあるので最初はそれなのかとも思った。どんなふうに観てもいいのだが、ありゃないよな。確実に演奏者にも観客にも迷惑かけてるよ、アンタ。しかもですよ。セカンドセットの演奏の静かな場面で別の客のケータイが鳴る。しかもその着メロが「タ〜ラコ〜タ〜ラコ〜」っていうあの味の素(でしたっけ)のCMソング。もう脱力を通り越してスコっと集中力が途切れたですよ、ハイ。演奏内容はとても良かったので馬鹿な、サイテーな、腐れ客のおかげで、怒り心頭。マナーというか常識というか、お前ピットインに何しに来てんだよ!!という話だよ。
と、ここまで書いて考え込んでしまった。彼らは自由に音楽を聴いていたのではないだろうか。前者のヤツは静かな演奏がうれしくてヤツなりに嬉しさを表現したのだ。後者のヤツは「別に演奏中にどんな音が鳴ったってかまわないじゃない」と常識破りの自由さを持つ人間だったのだ。さて。
どのように音楽を聴くのも自由であるとよく言われる。でも他人に迷惑をかける聴き方はやめてほしい、と誰もが思っているはずだ。音楽にもTPOがあるはずだ。ではそのTPOとは? 他人に迷惑をかける行為とは? 例えばダンス・バンドのライブでは踊らなければいけないのだろうか。じっとステージを観ていたら、周りの人に迷惑がかかるだろうか。「こいつ、ノリが悪いな、オレまでシラケちゃうぜ。」と思われたら、他人に迷惑をかけていることになる。じゃあダンス・バンドのライブではダンスを強制されるのだろうか。逆に今日みたいに静かな音のライブの時、その静かな音にものすごく感激して、いても立ってもいられなくなってうずうずして今日のヤツみたいにドタバタ床を蹴り倒したくなる。でもそれは迷惑行為なのでそいつは黙っていることを強制されるのだろうか。以前にも全く別な視点から書いたと記憶するが、いずれにせよやはり音楽の聴取というのは不自由なものなのだろう。というかライブという「場」はある一定の暗黙の了解があって成立するのだ。その暗黙の了解に歪みが生じたとき聴衆は他人の行為を迷惑と感じるのだろう。これは音楽のみならず社会生活を営む以上全ての場面に言えることだけれど、ポピュラー音楽の場面が一見自由な雰囲気を醸し出しているから逆に一番不自由に感じるのではないだろうか。
なんだか今日のライブの出来事でくだらないことをまた色々と考えてしまった。
ところで7月5日は武蔵小金井で私が出るイベントをやりますのでぜひお越し下さい。詳しくは → http://d.hatena.ne.jp/doubtwayoflife/20060602
なお、内橋和久+ハンス・ライヒェルは内橋+巻上公一外山明に変更になりました。ガーン(死語)。