ボロット+巻上+佐藤@横浜BankART。

ボロット・バイルシェフ+巻上公一佐藤正治を観に横浜BankART1929へ。そもそも巻上さんの『月下のエーテル』の手持ち分がなくなったのでもし予定が入ってなかったら持ってきてくんないかという連絡に、ヒマだから喜んでー、と言って急に行くことに決めたのが真相。BankARTというスペースはものすごくナチュラルなリバーブが効いてて、PAを通すと音がワンワン回っちゃって細かいフレーズとか、言葉ですら聞き取りにくい。辛うじて大勢の人が入ることによってなんとか若干音が吸収される感じ。逆にこういう音の環境の中ではロングトーンとかマイクを通さない鳴り物は実に美しく響き渡る。そしてその環境の中でいち早くそれを察知して、それに合うように演奏した巻上さんと佐藤さんはさすがだなーと感心した。
で、ボロットさんの音楽を初めて聴いたわけだが、ハッキリ言って感動しました。二弦のアルタイの楽器トプシュールをビョンビョンと鳴らし、飄々とうたを歌うその大きな時間の流れは、いみじくも巻上さんがMCで「ずっと聴いていたい感じでしょ。」と言ったように、本当に4時間でも5時間でも聴いていたい感じ。喉うたのマルチフォニックな驚くべき発声法と、それとは対照的な柔らかな高音の歌声。交互にそれを使い分けるボロットさんの歌はとても素敵だった。巻上さんとのコーラスが絶品。あまりの心地よさに途中居眠りしてしまう。様々な意味で音楽の時間的流れに関して考えさせられたコンサートだった。よく即興に関してはスピードが速ければ速いほど優れた演奏だというようなことが言われるが、ま、たしかにそれはある意味正しいのだけれども、それってジャズ的即興の見地に立った側面からの見方でしかない。ジャズ至上主義というかジャズ・セクショナリズムの悪しき影響はボロットさんのような全く違う文化圏の音楽を批評するのに100年くらいかかるんじゃないか? その点巻上さんの自由な即興の発想はそんなことを飛び越えて、ゆっくりといい音を出すことに注力する。つーかそもそもこんなことを書くこと自体、オレの音楽的受容の幅の狭さを晒しているようなもんですが(苦笑)。とにかく素晴らしいライブでした。佐藤さんの手打ちのバスドラ(?)を鳴らすとまるで雷が落ちてきたような音で響いていたのも可笑しかった。巻上さんの変なラッパのロングトーンもめちゃくちゃ美しかったなー。オレにとってはまったく瓢箪から駒のようなライブだったがとても充実してた。一緒に行った配偶者も絶賛。当然、帰りにボロットさんのCDを購入した。
帰りは野毛の立ち呑み屋(楊貴妃もビックリの餃子屋の斜向かい)でビール3杯と串揚げ。東海道線で東京まで戻り、雨も上がって気温も湿度も心地よかったので電車はまだまだある時間ではあるが、歩いて家まで帰ることに。途中淡路町を通ったところで、いつもの飲み屋「明石」がまだ開いてたので、そこでもビールと谷中生姜と鰯唐揚げ。一日中配偶者と呑んで喰っていいライブを観て、という非常に贅沢な一日だった。家に着く頃、近隣の家の壁にヤモリの子供(小さいヤツ)を二匹見つけて、これもまた気分良し。