すごく長い告知。飛ばし読み可。

いくつか告知を。


まず、"Improvised Music From Japan 2005"という雑誌が刊行されました。企画・編集・宣伝・流通から納品・販売まで全て鈴木美幸というひとりの男がやっている雑誌です。
そもそもインターネットがこれだけ幅を利かせた現代に、紙メディアの有効性はあるのか。各雑誌の編集長の意見を聞きたいところであるが、特に音楽に関しては、雑誌媒体はほぼ死滅状態。売り上げは往年よりもケタ単位で下がっていると聞く。ではインターネットの、速さが全ての情報流通に紙媒体はいかに対応しうるか。私は、その批評性しか残されていないと思っている。情報やら宣伝告知やらアフィリエイトやらバーター・リンクやら、そういったものはインターネットに全て任せておけばいい。紙媒体はインターネットに出来ないことを模索すべきである、と思うのである。もちろんコンピュータを持っていない人のためにそれなりの情報誌は必要である。それはそれで「ぴあ」とかに代表される情報誌なりフリーペーパーなり、CD屋さんに行くだけでもけっこうな情報をピックアップできる。
音楽媒体がなぜ死滅状態かというと、売り上げの問題もあるのだが、まず編集方針に非常に問題がある。完全に広告を出稿したメーカーの作品しか記事にしない某雑誌を始めとして、まぁどこの音楽雑誌も似たようなものなのだが、サンプル盤(製品になる前のCDR含む)を送ったものはレビューに載る。サンプル盤を送らなきゃレビューに載らない。サンプル盤を送ったものでもレビューに載らないものもある。そこはそこで編集人の音楽観がそれなりに機能していると思うのでそこは問わない。問題は「サンプル盤を送らなきゃレビューに載らない」部分だ。編集部が自ら面白いものを見つけてこない。受け身である点。これは激しく問題だ。面白いものを見つけて来れりゃあとはライターに振って良い(と思う)。そこにこそ編集方針が大きく反映されるのではないか。
"Improvised Music From Japan" は企画・編集を全て鈴木美幸がやっており、良くも悪くも一本筋が通ったものとなっている。本来雑誌ってのはこういうものだったのだと思う。そしてその編集方針自体が既に批評として成立している。
広告もとても厄介なものだ。広告主は当然広告した商品が雑誌で良いレビューをされることを期待しているし、自社作品を売るために広告を出したからには雑誌がより多くの人の手に読まれることを期待する。雑誌社は雑誌社で公称何万部の売り上げで、より多くを売るためには分かりやすい記事が必要であるというふうに、編集方針には批評性がなくなり、ちょうちん記事やら安易なインタビューのオンパレードとなり、より多くの広告収入を得ようとする。こういったなあなあでぬるま湯に浸った広告主と編集サイドの、何ら批判・対話のない、悪循環の繰り返しがここ20年は続いている状況だ。
"Improvised Music From Japan" はそういったしがらみとかが一切ない。広告を取っていないからだ。というか広告を出稿してくれる企業がないのであった(泣)。
英語と日本語のバイリンガルで紙面が埋め尽くされ、各々の気合いの入った文章も読ませる。特に野々村さんのメルツバウ論は圧巻。CD2枚が付録で付いて\2,500は安いでしょう。タワレコとかユニオンでも買える(と思う)ので皆様、是非。私もちょこっと書いてます。


それから。
来月25日に出る「月間プレイボーイ」はジョン・コルトレーン特集。中山康樹さんの編集です。以下中山さんのサイトからコピペ(ちょっとエディット)告知します。なぜなら私も寄稿させていただいているからです。いまゲラが来ておりますが細かすぎて読めません(と中山さんにメールを送ったところです)。

ジョン・コルトレーン特集(PLAYBOY 2006年3月号 1月25日発売)
John Coltrane:The Life Of A Jazz Saint direction by Yasuki Nakayama
《内容:掲載順》
マイルス・デイヴィスコルトレーンを語る
コルトレーンは永遠に:原田和典
コルトレーン2大ライヴ名盤の洗礼:中山康樹
山下洋輔コルトレーンを語る
・神々のモーダリティー菊地成孔
コルトレーンブルーノート、ちょっと泣ける話:中山康樹
・なぜ《マイ・フェイヴァリット・シングス》だったのか:沼田順
コルトレーンと映画『ヴァニラ・スカイ』秘話:藤岡靖洋
・もしもコルトレーンが生きていたら:田中伊佐資
コルトレーンは口に苦し!?:後藤雅洋
コルトレーンはロックだった!?:渡辺信太郎
・ジャズ・サックス界最強王者決定戦:村井康司
コルトレーンに魅せられた男たち(中平穂積・茂串邦明・藤岡靖洋)
・名盤紹介:コルトレーン極めつきの30枚:『コルトレーン』〜『エキスプレッションズ』
 (後藤雅洋・杉田宏樹・田中伊佐資・沼田順・林建紀・村井康司
・日米のコルトレーン観:マイク・モラスキー

さいごのマイク・モラスキーさんは、一度お会いしてゆっくりお話をしたい。この夏『戦後日本のジャズ文化』という本を青土社から上梓された方です。ピアニストでもあるそうです。

以上長々と告知でした。