本業。及び、本屋での出来事。

8月11日(木)
本日も午後2時より吉祥寺GOKサウンドにてONJO plays Eric Dolphy "Out To Lunch"のミキシング with大友良英。今日は即興演奏と"Gazelloni"のミックスだったので3時間くらいで終わるだろうな、と思っていたのだが意外と難航。「ガゼロニ」の楽器間のバランスがどうにも上手くとれない。そりゃそうだ。あれだけの人数にてエイトビートのパンクを演奏してるわけだから音がダンゴにもなる。それでも近藤さんの細かい調整によりなんとか各楽器の音を聴き分けられる風にはなった。笑っちゃうくらいカッコイイ演奏だ。途中で津上研太がふらりと登場し、3人で即興部分を聴くことに。ほとんどの周波数の音が出入りする激しい即興の場面ではやはり心地良くなって眠たくなる。
ミックスは終了! 完璧。これはすごい作品になるだろう。
その後、ONJQの最後のポルトガルでのライブのミックスにもちょっと立ち会う。マツ・グスタフソンがテナーとバリトンを吹いている。野外録音なので途中マイクが風の音を拾ったりしてなかなか生々しい録音だ。とてもクリアな録音で、ミックスを施すとけっこう良い音になりそうな予感がする。けっこう遅くなったので私は途中退場して大友っちはGOKに残った。
帰ってきてからもう一仕事。明日中にアンドリュー・ディアンジェロのジャケットとCD盤の入稿をしなけりゃならないのでそれにまつわる様々な細々した仕事。疲れた、久々に。
8月12日(金)
明日から配偶者の実家(福島)に行かなきゃならないのでメールで済まない仕事を本日中に全て片付けねばならない。忙しかったっす。汗を90デシリットルはかいた。分刻みでプレス会社と出力会社と印刷会社を行ったり来たり。どうにか全て終わったときにはもう骨抜き状態であった。あー疲れたー。それにしてもこちらのスケジュールの都合にもかかわらず、しかも、非常に多忙な中にもかかわらず、私の仕事を優先してくれたデザイナーの佐々木暁くんには本当に感謝している。彼は本当にスゴいよ。
アンドリューのジャケは以前も日記に書いたが、3面ディジパック観音開き穴あきジャケ(長い)。売れないものにジャンジャン経費をかける。これ、経営の基本ね。(前にも書いたな。)
夜、配偶者と外食帰り、家の近くの本屋によって立ち読みしていたら、激しい雨が降ってきた。そしたら突然ずぶぬれの青年が店の中に入ってきて「トイレ貸して」とかいって勝手にバックルームの戸を開けようとしたので店員さんが「ちょっと、勝手に入らないでくださいよ」と制止した。それでも青年は薄笑いを浮かべて「トイレ借りるから」といって店員さんの制止の手をふりほどいて中に入ろうとする。オレは青年が多分軽い精神病だとその時気付いた。店員さんが「警察呼ぶぞ」と言ったので、側で見てたオレは、そりゃちょっとヤバいよと思い、青年の手をつかんで「やめろ」と言った。青年相変わらず薄笑い。店員さんはちょっとビビリ気味だったのでしゃーねーなと思って青年の手をつかんだまま外に連れて行き「自分の家に帰りな。」と言った。それでも青年は中に入って来ようとするのでもう一度「自分の家のトイレに入りな。」と言ったらオレの後ろから店員さんが「早く帰れバカ野郎、警察呼ぶぞコラ!」などとかなりの大声で怒鳴った。青年はずぶぬれの中雨に打たれて相変わらず薄笑い。店員さんには「ありがとうございました。」と感謝されたが、実に微妙な、複雑な心境になった。社会的弱者を排除したオレ。大雨の中に追い出したという状況も複雑な心境に拍車をかけた。オレのとっさの判断だったのだが、それにしてもああいった場合、どうすればよいのか。見て見ぬ振りをするのが一番なのか。でもその青年が勝手に人の店のバックルームに入ろうとした行為は社会的には許されることではない。では私のした行為は正しかったのか。なんだか正しいことをしたとは思えない心境なのだ。いずれにしろ、判明したことは、そうした軽い精神病の人々に対する対応をオレは全く理解していないな、ということと、世間は精神病患者に対してかなりの誤解、というか差別意識があるな、ということだ。店内にいたもう一人の客は見て見ぬ振りを決め込んでいたし、店員さんの異常とも思えるビビリ具合と最後に吐いた一言がそれを物語る。
ま、ちょっとだけ落ち込んだわけだが、その青年、オレのことをどう思ったのだろうか。帰り際、本屋の二件くらい隣のマンションの入り口で雨宿りをしているその青年の姿があった。相変わらず笑っていた。彼の笑顔を見てまたちょっと落ち込み気味になった。