出たよ! 久しぶりに。

梅津和時・演歌ソロ巡業 Part3 @ 国立No Trunks。
いや〜、感激したよ、感激。で、その感激がいっそう盛り上がったのは、やはり、かの「ジャズじゃねえ」攻撃だった。ファーストセットが終わって、梅津さんと片隅のテーブルにてCD販売及びサイン会をしていた時に入店してきたスーツ姿で部長/課長風の紳士と、妙齢な御婦人がお二人。そのお三方の姿は、普段の梅津さんのライブには見られないような雰囲気を持ってらっしゃる。ちょっとその席だけ別のオーラがあるというか、まぁ妙な予感はあったんですね。
セカンドセットはクラリネットの「津軽海峡」から始まった。No Trunksには十数名のお客さま。それでも普段はバーとして営業しているNoTrunksの席は満席である。熱気が伝わってくる。曲が終わると割れるような拍手。さて拍手が止み、梅津さんが次の曲に備え息を整えつつ楽譜を準備している一瞬の空白に、「ジャズじゃないのか。」とスーツ姿の紳士が誰に言うでもなく独り言のようでもなく、いわば聞こえよがしにつぶやいた。一瞬唖然とするNo Trunksの空間。
「ジャズを聴きに来たんだけどな。会計して。」
会計を済ませて紳士は「ジャズじゃない」ライブ空間を後にした。二曲目が終わった時に妙齢な御婦人二人もそそくさとNo Trunksを後にした。このような事態を目撃するに、燃えないはずのない梅津さんである。200%ソウルがこもった演歌をこれでもかと吹きまくる。当然お客さんも盛り上がる。最後にコテコテの「なみだの操」そしてアンコールはしっとりと「リンゴの唄」。鳴り止まぬ拍手。少人数とは思えない拍手の鳴り具合。圧巻でありました。ちょっと涙がこぼれた。
終了後梅津さんに「やりましたね、梅津さん。晴れてジャズじゃないと言われましたよ!」というと梅津さん拳を握りつつ「やったね。燃えたよ。あれでお客さんも一体化した感じだったよね。」とすごく満足げなご様子。向かいに座ったO田さんには「あのおじさん、沼田さんが仕込んだサクラかと思いましたよ。」と笑われた。


このような紳士淑女が、日本のジャズを支えているのだろうな。もうジャズなんだかヒーリング音楽なんだか、わけがわからない。心を癒してくれるピアノ・トリオ。麗しく美人のジャズ・ヴォーカル。イケメンのサックス奏者。もはやジャズには進歩とか進化とか、混合とか猥雑感とか、ハートとかソウルとか、そういう一切は不必要なのである。そういう人はそういう人でジャズを囲い込んで各々楽しんでくれることを願うばかりである。ただしそういう人はNo Trunksに行ったり、梅津和時大友良英ナンバジャズなどのライブに行ったり、doubtmusicのCDを買ったりすると不幸になるので、注意が必要である。


人間、仮想敵というのを設定した方が、色々な場合に論理を立てやすいので便利なのだが、少なくとも私の場合ぼんやりとその仮想敵というのが、上記のようなジャズ紳士淑女に端に発し、そういった発想そのものというか、自分のテリトリー外のことを受け入れようとしないメンタリティというか、そういうことに設定している。いまのところ。しかし己の「仮想敵を設定する」という大前提自体が、そもそも大きな過ちを犯しているのかもしれないのだが、そうでもしなきゃ、とてもじゃないけどやってゆけないわけです。私の人生。もっとおおらかな人間になりたいものです。いずれにせよ、そんなことまで考えさせてくれた「ジャズじゃない」紳士にはこの場を借りて謝辞を述べさせていただきます。
あと、No Trunksの村上さんとスタッフの方、暖かい拍手を送ってくれたお客さん全員に心より感謝!

梅津さんの次のソロ演歌巡業は2月11日(水・祝)下北沢レディジェーンにて!