夏はいつのまにか過ぎていた。

いや〜、しばらく更新が滞ってしまいました。忙しかったッス。なにをやってたかというとナンバジャズ関連とか今井和雄トリオ関連とかです。それしかやっていないと言えばまぁそれまでなんですが。で、忙しすぎたので、マツ・グスタフソンのライブも一日しか観れなかった。マツとペーターとケン・ヴァンダーマークのサックス3本のを観たかった。しかも坂田さんまで参加してサックス4本で演ったというではないか。これは観たかった。是非観たかった。しかし過ぎたことを嘆いていてもしょうがない。


まぁ忙しかったとはいえ、その忙しさの中にも激しい楽しみも見出せるわけで、忙しい、しかも楽しいという時には脳内でなにかの物質が分泌されているのだろうか。とにかく液体だか電気だか知らんが分泌された。


ことのほか楽しかったのは、大友+山本/ギター・デュオとナンバジャズのプレゼント用CDRを作ったとき。山本精一画伯が描いてくれた絵の素晴らしさで楽しい気分になったのはもちろんあるんだけれど、予想だにしていなかったのが、画伯が9枚もの絵を描いてくれて、F.M.N.石橋さん経由でうちに送られてきた。で、当初は1枚の絵をスキャンしてそれを印刷してジャケにしようと思っていたのだが、9枚も描いてくれたとなると、貧乏性の私は、その絵を全部使いたい、と思ってしまう。しかし全部使用してプレゼントとなると経費的にもけっこうなことになるので、どこで折り合いをつけるかという話になる。石橋さんとも十分相談して、結局両面印刷にしてウラオモテで2枚の絵を使おうということになり、しかも、いろいろな組み合わせを作ろうということになった。


山本精一画伯の絵はシンプルなもの、かわいいものから、情念のこもったもの、意味不明なもの、美しいものと、とても振れ幅が広いので、その裏表の組み合わせをどうするかと考えてるとき、まさにこの時も分泌されただろう。で、結局12種類の組み合わせに収まり、それを全て簡易印刷に回すことにした。


通常、CDのジャケットを作る時は印刷屋との直の交渉ではなく、仲介を通してやっているのだが、ジャケの印刷屋というのは、とにかく量産体制をとっており、紙質にこだわったりインクにこだわったりするとものすごくいやがられる。だから今回のような少量でしかも12種類なんてやってられないわけで、はなっから印刷屋にお願いする気はなかった(もっともやってくれたとしても以上に値段が高いしね)。だから今回のプレゼントCDRのジャケは近くの文具屋さんにお願いして12種×25枚ずつを両面簡易印刷してもらい、プラケースにぴったり収まるように断裁してもらった。ここの文具屋さんのご主人がとても協力的で、こちらの意図を十分理解した上で、色々とアドバイスもしていただき、結果、とても満足のいく仕上がりになった。前回の大友良英モジュレーション限定盤の中のカードを簡易印刷してもらったのもここの文具屋さんで、こういった手作りのものを作るのは本当に楽しい。


いつもCDをプレス依頼し、ジャケット印刷を依頼し、その制作行程は謎のままなのだが、量産されるものは、それはそれで仕方のないことでもある。完成品が納品されてくるまでの「つくっている」という実感がまったく湧かないのであるが、今回のはつくっている実感が湧きまくりで、この実感というか皮膚感覚というか、それは本当に大切なことであるなーと、改めて思った。CDをつくる、ということは演奏者とのやり取りから全てが始まって、打ち合わせ、演奏、録音、TD、マスタリング、という課程を踏むわけだけれど、その間は実感湧くんだけど、その後の生産過程の「実感」は資本主義量産体制に完全に取り込まれてしまっているわけだ。


しかもプレゼントCDRだから、間接的にはナンバジャズ拡売のための企画ではあるけれども直接的には売上にも何もならない。経費は出てゆく、制作に時間は取られる、それだけ。しかし、こういう売上にも何もならないという制作のためにとても一所懸命になるのが全く楽しいのだ。実際プレゼントCDR制作中は「ナンバジャズ格売のため」という大義名分をすっかり忘れてたし(ホントはそれではいかんですな)。カネにならないことは往々にして楽しいものなのですかね。


そんなことを考えていたここ数週間でした。いつのまにやらすっかり夏も終わりです。すっかり気温が下がっちまって、低血糖の私は冬を過ごすため、文字通り食欲の秋に突入しようかと思っております。