昨日(今日)の夜中の高柳の音楽体験。

3月に高柳昌行 New Direction For The Art の『La Grima(涙)』というCDをリリースする。以前出たLP2枚組『幻野』というアルバムに6分間だけ抜粋されて収録されており、Vividだかどこだかから出た抜粋再発盤には収録されず、3年前くらいにCD化されたものの、それもやはりオリジナルLP通りの抜粋ヴァージョン。実際には40分ほど演奏されている。
リミックスを終え、本日マスタリングを終え、完璧な(とはいえ元々の録音が決していい状態ではなかったので限界がある)音質で、昨日の夜中、のめり込んで聴いていた。
これは入り込むとヤバい。聴き流すと聴き流せるのだが、いわゆるトランス状態というのだろうか、3人の音が体の中に入ってきてしまった。というのが正しい言い方なのかオレが「入り込んだ」のかよくわからない。森さん(sax)が「君が代」をデフォルメして吹いたのどの辺りだったかなー、などと最初はわりと冷静に聴いていたつもりだったのだが、20分くらい経過した辺りで入り込んでしまった(音が?オレが?)。雑念が全くない状態になっちゃったのだ。配偶者が部屋に入ってきて「もう寝てるよ」という声でふと我に返った感じ。
自分のレーベルからリリースするので何度も聴いているのだが、これだけ入り込めたのは昨日が初。久しぶりの体験だった。過去にもこういう体験はあって、レコードでのそれはカンの「フューチャー・デイズ」だけ。メールス・フェスでの真っ暗闇コンサート(ドゥンケル・コンツェルト)もかなり強烈な体験だったがあれはオレの場合ほとんど幻覚を見たのだった。まぁ妙な葉っぱの力を借りてというなら他にも何度かあるが、シラフ(といっても昨日はビール350mlとホットウーロンハイ2杯を呑んでいたが)で・自宅で・録音物で・のこの体験は「フューチャー・デイズ」以来だ。
あと数日で正式な告知をしようと思うが(足りない情報一点あり)、聴き流されるのであれば売れない方がまし、とすら思う。それほど凄まじい演奏だ。一箇所だけ高柳が数秒、聞こえよがしにフレーズを弾く部分がある。このフレーズは森の「君が代」に対する高柳なりのユーモアなのかな、とも思う(それはここでは明かしません)。オレが思うだけで、これはあくまで本人の意図するところであるので、勝手なことは言わない方がいいだろう。聴き手の各々の想像力にお任せします。
こういう体験はこの後もしばらくないだろう。これは批評を超えている(もしくは批評を要請しない)個人的な体験だ。まさかそれが高柳昌行の音楽でこの身に振りかかるとは思わなかった。