最低な男。

マツ・グスタフソン/バリトン・サックス・ソロのマスタリング。今回のマスタリングはmorgue社の須藤力さん。ディスクユニオン時代からお世話になっているマスタリング・エンジニアの方。morgue社の歴史は古い。間章時代からだからかれこれ30年くらいになるのか。
バリトンの音は好きだ。特にマツのプレイは凄まじいテクニックに裏打ちされたぶっといバリトンサウンドなので、音があまり丸くならないように低域を持ち上げる。残響は少な目。この「残響は少な目」部分は私の好みの音でマツともそこでぴったり意見が一致した。仮のマスタが出来、一枚をマツに送る。ふたりで聴いてみて意見を交換し合って最終マスタが出来る。この部分はまだパソコン上のデータのやりとりではなくて郵便のやりとりだ。
夕刻にマスタリングは終了し、新宿の都庁周辺の地下道を歩いてみた。驚くほど無駄な地下道で、時間帯のせいもあるかもしれないけど、ほとんど人通りがなく、怖くなった。ここに我々の税金が何千万と使われているのか。まるで新宿とは思えない 無機質で乾いた都市のブラックホール。不思議な国だな、この国は。地上に出たら出たで仕事帰りのサラリーマン&サラリーウーマン軍団に遭遇。みんな同じような格好で同じような速度で同じような振る舞いで信号を渡る。これはこれでまた怖くなった。あの中の一人一人各々にその人の生活があるんだろうけど、なんだかホントに誰かに飼われてる大人しい動物のように感じた。と同時にこの人達に比べたらオレって最低な人間なんだろうな、とか思い、ちょっと嬉しくなった。
キリちゃんから電話があり、呑もうぜ。と。「いや〜オレ急ぎの原稿あってさぁ、呑んでる場合じゃないんだけどさ、行くわ。」と返事して、7時過ぎに淡路町「明石」へ。臼井・桐原・保坂さんと。原稿書かなきゃいけないから10時前には帰ろうと思ったが、ついつい終電まで。あぁオレってなんて目先の快楽を優先してしまうのだろう、と。ホントに最低な男である。私は。
配偶者へのおみやげも忘れずに買ってゆく。よく昔のドラマやマンガで、酔っぱらいのお父さんがヘロヘロになりながら寿司折りかなんかをぶら下げて帰宅するシーンがあったが、まぁあんな感じ。寿司折りじゃなくていまはコンビニ袋だけど。酔っぱらいのお父さんの心境、よく分かるよ。目先の快楽を優先した代償として配偶者になんらかの償いをしなけりゃいけないちょっとした罪悪感・後ろめたさ。オレなんかまだましな方だと思うけど、抑圧されてる世のお父さんたち、なんか気の毒だな。