レーベルはなくなるか?

JOJO広重さんのブログを読んで(http://noise.livedoor.biz/archives/2009-11.html#20091109)、またまた考え込んでしまった。特に以下のくだり。
> つまりレコードレーベル、レコード会社、レコードショップは、もういらない。
> CDのパッケージを作り、在庫を持ち、流通し、店舗に並べて売るということの意味のなさを、痛感する。


私はレーベルをやっているのでおおいに反発したいのはヤマヤマなのだが、広重さんの言っていることは、冷静な現状認識であると思う。つまり音楽家が音楽を作ってそれを自ら売って行くというきわめてシンプルな商業活動がいつのまにか複雑化してしまった状況を含め、You TubeMy Space や iTune Music Store などこれほどまでに音楽のやり取りのインフラが出来上がってきたから、そんなに手間と経費のかかるパッケージソフトは時代遅れだろうと、そういうことだ。


だがしかし、とも思う。(そう思わなければレーベルをやっている者として言い訳が立ちません。) 世のマジョリティの動きに従って、大事なものを置き忘れる危険はないのか、と。「大事なもの」とは何かにもよりますが。音楽という実体のないものをたとえそれが幻想であれ実体化したものがレコードとかCDとかだとするならば、その幻想までぶち壊すのは身も蓋もないのではないか。


などと本当に言い訳がましいことをほざくしかないのだが、ハッキリ言って数年後、私はどのように生活しているのか、見当もつかない。タワレコとかユニオンとか潰れちゃったりしたらdoubtmusic直販部がほぼ独占で売り上げ前年比300%アップ! なんてことはまずあり得ない。タワレコは一部の店舗を除いてより効率的なセンター・オーダー・システムに変更されたし、言ってる先から高円寺サンレイン・レコードは来月でなくなるとのメールが来るし、本当に先が暗いです。


メジャーレーベルがもしCD制作を潔く止めたとしたら、その余波は確実に個人レーベルにも降りかかる。まず、プレス代、印刷代の大幅値上がり。大手ショップの閉店。流通ストップ。そうなったら本当にCDはなくなるだろう。個人でレーベルを続けても赤字続きなのは確実だ。別の仕事をしながら片手間の趣味でレーベル運営(赤字)というスタイルしか残り得ない。録音技師もマスタリング・エンジニアも専門職ではなくなる。(危機的状況のマスタリング・エンジニアは現在MP3用のマスタリング技術を習得中だそうです。つってもコンプ掛けだけでOKじゃん、MP3なんて。)


とりとめがなくなるのでこの辺で止めときますが、音楽がこの先どうなるかは神のみぞ知るという他ありません。いくら自助努力したってなくなる時はなくなる。その時にあたふたすれば良いのだ。保険というシステムはどうも肌に合わないのだが、もし自分で保険をかけるとしたら「いい作品のCDを出し続ける」ことが最大の保険になるのではないか(と経営コンサルタントのようなたわ言を言ってみる)。いや冗談ではなく、それを怠ってきたのがメジャーレーベルではないのか。のべつまくなしにあり得ない数のタイトル数をまとめてリリースしたり、音楽自体じゃなくて紙ジャケ再発が目的と化していたり(もちろんいい仕事もまれにありますが)、音楽そのものよりも見栄えを重視したり、権威をバックに広告宣伝したり、メジャーの悪行は言い出せばきりがないけど、それほどまでに音楽自体を忘れていたメジャーの罪は大きいと思う。「いい作品のCDを出し続ける」。肝に銘じます。とりあえず。


※ 「頑張ってください」などというコメントはお断りいたします。悪しからず。