富士山。

ヨメの実家の福島に行った。高速バスで行った。首都高速の途中で左手に富士山が見えました。「うおおっっ」と思わず言ってしまった。この性はなんなのでしょう? たかが山じゃないですか。しかし思うにたかが山と言っても富士山の、かのフォルムには「うおおっっ」と言わざるをえないようなシンメトリックな美しさがあると思った。日本人に限らず、かのフォルムの美しさにはやはり思わず「うおおっっ」と叫んでしまうことであろうと予測する。
昭和の終わり頃までは、いや、平成に入ってからでもうちの近くの谷中墓地周辺の小高い丘に「富士見坂」と言われる場所がいくつかあって、晴れた日には富士山がきれいに見えたものです。ところが続々と建設される高層ビル、マンションによりその景観はすっかりなきものになってしまい、醜悪なビル群が林立する終末的な景観が残されました。
広重の富嶽三十六景には江戸の日本橋、本所、深川など東京の東から遠くに美しくそびえる富士山の姿が見事に描かれておりますが、もはや資本主義国家の象徴とも言える高層ビル群に、大自然の産物とも言える美しきフォルムが淘汰されてしまったということでしょうか。
近頃読んだ本によると、江戸時代の日本の人口は約3,000万人だったといいます。いまやその4倍以上の人口を抱えることになった日本は何をゲットして何を失ったのか、改めて深く深く考える必要があると思う。