立ち呑み屋考。

立ち呑み屋に余計なサービスは不要である。TVCMをみながらふと考えたのである。うちの近くの立ち呑み屋はこの、余計なサービスがあるので落ち着いて立ち呑みができないのだ。こないだ行ったときは客5人に対し従業員5人である。従業員はひとりで十分。人件費をかけない分、酒類、つまみ類の単価に反映できるはずである。立ち呑み屋に来る客というのは(オレだけかもしれないが)、立って呑むくらいだからテメーで呑む酒と肴のことくらいテメーでやりたいのである。そのかわり安く呑ませてくれよ、と。それが立ち呑み屋の神髄であると思っている。普通の呑み屋とたいして価格差がないのなら座ってきっちり呑ませてもらうぜオレは、という人は多いのではなかろうか。
理想的な立ち呑み屋が水道橋にある。秘密にしておきたいので名前は明かさないが、そこは従業員ひとり。たまにバイトの兄ちゃんが来る。で、せいぜい二人。居心地がいいのでもう最近はいつ行っても満員で外にまで人が溢れている。そして客筋がいい。みんな楽しそうである。全品300円均一。
もう一件の理想的な立ち呑み屋は淡路町にあった「山田屋酒店」の倉庫でおばちゃんがやってた立ち呑み屋。酒屋の倉庫を簡単に改造した立ち呑み屋だったので、雰囲気がサイコー。リーマン時代にほぼ毎日のように行ってた。おばちゃんもすごくいい人で、オレらのことを信用してくれてたし、ワケのわからない酔っぱらいが来て、くだを巻いて山田屋さんに迷惑がかかってるのを見てオレらが追っ払ったりしたのだった。で、おばちゃんはオレらのことを完全に信頼してくれていたので、おばちゃんが忙しくて倉庫(立ち呑み屋)を出て酒屋の店番をするときはオレが立ち呑み屋のカウンター内で客にビールを注いだり会計をしていたのだった。酔っぱらいながら(笑)。事情があって山田屋さんは今はやっていない。おばちゃん、どうしてるかな。オレが会社辞めるときも、すごく心配してくれて「新しい事業始めるならお金出してあげてもいいんだからね。」とまで言ってくれたのだった。もう泣きそうになったよ。
話がそれた。立ち呑み屋のコンビニ的性格が見直されて、数年前から本が出るほどに流行しているらしく、そこここに新しい立ち呑み屋が出来ているが、ほとんどの新しい立ち呑み屋は余計なサービスを提供してくるので居心地があまり良くないのだ。オレの立ち呑み屋の理想は、オレの好きなように、オレの勝手で呑ませてくれる立ち呑み屋だ。そういった理想的な立ち呑み屋、上記二件以外にもけっこうあるんですよ、実は。ポイントはおばちゃんがやってるところかな。もちろん例外もあるけどね。